色彩調和を目的にしたシステム【PCCS】
PCCS(Practical Color Co-ordinate System)とは、日本語で「日本色研配色体系」といい、財団法人日本色彩研究所によって開発された表色系(顕色系)です。
PCCSは、色彩調和を目的にしたシステムで、Hue(ヒュー)と呼ぶ色相と、明度と彩度を融合したTone(トーン)という2つの属性により色を表します。これをヒュートーンシステムと言いい、PCCSの大きな特徴となっています。
色彩調和とは
色彩調和とは、色同士の違いと共通性のバランスが良くまとまっている状態で、見た人に好感を与える色の組み合わせと言えます。PCCSは色彩調和を目的にしたシステムですので、関連する色彩調和論の代表的なもを簡単に紹介したいと思います。
ルードの色彩調和論
色相環の中でより黄色に近い方の色の明度を高く、青紫に近い色の明度を低くすると自然な印象の配色になるとしています。このような自然な印象の配色をナチュラルハーモニーといいます。
オストワルトの色彩調和論
「調和は秩序に等しい」という考え方で、色彩体系の中で規則的な位置関係にある配色は調和するとしています。オストワルト表色系は「混色量の共通性」という考え方にもとづいた色彩調和を目的とした表色系(混色系)で、これはPCCSのトーンによる調和の考え方にも影響を及ぼしています。
ジャッドの色彩調和論
ジャッドは色彩調和論を4つの原理にまとめました。
- 【秩序の原理】 一定の法則によって組み合わせられた配色
- 【なじみの原理】 見慣れている配色や自然界にみられる色の変化
- 【共通性の原理】 共通の要素や性質を持っている色の配色
- 【明瞭性の原理】 配色する色の関係があいまいでなければ調和する
PCCSの色相・色相環
PCCSでは、色相環を表す色は24色相の純色で構成されます。この24色を設定するために、まず心理四原色の赤・黄・緑・青をベースとして色相環に配置します。
心理四原色とは
人間の色覚の基礎となる主要な色相で、他の色みを感じない色である赤・黄・緑・青を指します。
次に、色相環に置いた心理四原色の対向位置に、それぞれの反対の色(青緑、青紫、赤紫、黄みのだいだい)を置きます。この反対の色は、心理四原色の心理補色に近い色となります。
【心理補色とは】
ある色を注視し、次に他へ目を移したときに見える残像の色のことを心理補色といいます。たとえば、以下の青紫色を1分ほど見つめてから、右の空白部分へ目を移すと、上図の反対側にある黄色の薄い色がぼんやりと見えますが、この残像を補色残像といいます。
【補色残像が起こる原因】
私たちは、光の刺激を受けて色を感じていますが、ある色を見続けるとその刺激に慣れてしまい、反応が鈍くなります。その代わりに反対の色に対してとても敏感に反応するようになります。これは色順応という作用によって起こる現象です。
PCCSの色相環
PCCSの色相環では、心理補色の8つの色相の辺が等しくなるように間に4つの色相を置き12色相に、さらに中間色相を加えると24色相になります。
以下の図のように、24色相を各色相の間隔が知覚的に等歩度(見た目に均等)になるように配置します。この24色相には、加法混色の三原色であるRGBと、減法混色の三原色であるCMYに近い色相が含まれています。
色相の表示方法
PCCSの24色は、英語の色相名、日本語の色相名、色相番号で表します。
日本語の場合は「赤」「黄」などの色の名前と、「黄みの赤」などのように色相の色の名前に「色みの修飾語」をつけるものがあります。
英語の場合は「赤」は「Red]、「黄みの赤」は「yellowish red」(〜ishは 、〜の という意味)です。
各色相は「紫みの赤」から始まり、時計回りに1から24までの「色相番号」がつけらており、色相記号で表す場合は、色相番号の後に色相の略語をつけて表示します。
例えば、
- red(赤)は、色相番号が 2、redを略してR(大文字)
- yellowish red (黄みの赤)は色相番号が 3 yellowishを略してy(小文字)+ redを略してR(大文字)
というようになります。色の名前の略語なので覚えやすいですね。
一部、青と青緑については、色相名での表示をこれ以上細かくできないため、日本語色相名と色相記号が同じになっており、色相番号のみの違いとなっています。
色相記号 | 色相名 | |
---|---|---|
1:pR | purplish red | 紫みの赤 |
2:R | red | 赤 |
3:yR | yellowish red | 黄みの赤 |
4:rO | reddish orange | 赤みのだいだい |
5:O | orange | だいだい |
6:yO | yellowish orange | 黄みのだいだい |
7:rY | reddish yellow | 赤みの黄 |
8:Y | yellow | 黄 |
9:gY | greenish yellow | 緑みの黄 |
10:YG | yellow green | 黄緑 |
11:yG | yellowish green | 黄みの緑 |
12:G | green | 緑 |
13:bG | bluish green | 青みの緑 |
14:BG | blue green | 青緑 |
15:BG | blue green | 青緑 |
16:gB | greenish blue | 緑みの青 |
17:B | blue | 青 |
18:B | blue | 青 |
19:pB | purplish blue | 紫みの青 |
20:V | violet | 青紫 |
21:bP | bluish purple | 青みの紫 |
22:P | purple | 紫 |
23:rP | reddish purple | 赤みの紫 |
24:RP | red purple | 赤紫 |
次回は、PCCSの明度と彩度、色の三属性による表示を解説します。
記事監修:株式会社プラスカラーズ 代表 岩田亜紀子 / 色彩検定1級カラーコーディネーター
参考文献:色彩検定公式テキスト 2020年改訂版